ニュースの概要

水耕栽培、垂直農法、温室生産、LED栽培の資材と技術支援を手がけるHort Americasが、カナダに事業拠点を設けた。モントリオールの現地チームが、園芸照明や栽培システムの選定、電気使用量の削減、作物ごとのDLI(=1日に植物が受ける光の総量)や光の色の組み合わせについて、カナダの生産者を支える。照明ではGE Currentの栽培用LEDを活用し、栽培計画や設計の最適化を後押しする。培地ではGrodanのロックウールも関連資材として挙げられている。資材を売るだけでなく、設計の段階から生産者に寄り添う体制を北米の北側へ広げる動きといえる。カナダで栽培用の設備投資を検討する事業者にとっては、相談先が国内に生まれた形だ。

引用元: Hort Americas、カナダ法人を設立し垂直農法・LED栽培支援を拡大(FloralDaily)

分析・見解

栽培資材の販売から、設計まで伴走する支援への広がり

今回のニュースの核心は、資材の輸入窓口が増えたことではない。照明、栽培システム、培地、省エネの助言を一つの窓口で受けられる体制が、カナダに根づき始めたことにある。垂直農法(=建物の中で棚を重ねて育てる農法)は、機器を並べれば動くものではない。光、水、養分、空調が互いに影響し合うため、部品ごとに別の業者へ相談すると、責任の所在があいまいになりやすい。

米国では2023年にAeroFarmsが破産申請をし、AppHarvestも経営破綻した。原因は技術そのものより、電気代や設備費が収支計画を上回ったことが大きい。設計段階で数字を詰める支援が求められる背景はここにある。

冬の日照不足と電気代が、モントリオールを選ぶ理由になる

カナダは冬の日照が短く、温室でも補光(=足りない光を人工照明で補うこと)が欠かせない。一方でケベック州は水力発電が中心で、電力料金が北米の中でも低い水準にある。ここに拠点を置く意味は大きい。ケベックには屋上温室で知られるLufa Farmsもあり、都市近郊の生産に対する理解や需要が育っている。

またカナダは冬場、生鮮野菜を米国やメキシコからの輸入に頼る期間が長い。輸送距離が短い地元生産は、価格よりも「欠品しにくさ」で評価されやすい。

光の量と色を作物ごとに決める、数字の設計力

今回の支援項目に、DLIと光スペクトル(=光の色の配合)の選定が入っている点は見逃せない。たとえばレタス類は1日あたり十数モル程度で足りるが、トマトやキュウリはそれより多い光を欲しがる。必要量以上に照らせば電気代が無駄になり、足りなければ収量が落ちる。

LED照明の価値は、明るさの競争ではなく、必要な分だけ当てる制御にある。GE Currentのような照明メーカーの機器と、設計者の栽培知識が組み合わさって初めて、電力あたりの収穫量が伸びる。

設備を売る時代から、栽培成績まで支える時代へ

Grodanのロックウール(=岩を溶かして繊維にした栽培用の培地)のような定番資材も同じ窓口で扱えば、照明と培地と水やりの設計を一体で考えられる。ここで押さえたい視点は、競争の軸が「機器の価格」から「立ち上げの成功率」へ移りつつあることだ。新規参入者は性能表よりも、最初の一年に誰が横で見てくれるかを重視する。現地チームの存在は、その安心を売る仕組みである。

ビジネスへの影響

導入前に確認したい、照明と栽培槽の費用の見方

LED設備は購入価格だけで比べると判断を誤る。確認したいのは、1キログラム収穫するのに必要な電力量と、照明を交換するまでの年数である。見積もりの段階で、作物ごとのDLI目標、1日の点灯時間、想定電気代を並べて出してもらうとよい。数字を出せない業者は、栽培設計の経験が浅い可能性がある。

現地支援の有無で、立ち上げ期間と失敗の確率が変わる

不具合は稼働後の最初の数カ月に集中する。根が伸びない、葉先が傷む、湿度が上がるといった問題が出たとき、同じ時間帯で動ける相談先があれば対応が早い。契約前に、訪問の頻度、緊急時の連絡手段、栽培相談が有料か無料かを書面で確かめたい。

日本の事業者が今から押さえておきたい三つの視点

一つ目は、資材と助言を一括で頼める窓口を持つこと。二つ目は、電気代が高い地域ほど、省エネ提案の質で業者を選ぶこと。三つ目は、一つの作物に絞らず、光の設計を変えて複数の作物に対応できる余地を残すことである。日本でも電力料金は重い負担であり、カナダの事例は他人事ではない。小さな試験区画で一つの作物から始め、データを取ってから広げる進め方が堅実だ。

関連記事

[PR]
この記事をシェア: X (Twitter) Facebook